CEO Message

サステナビリティへの取り組みは
UBEの経営そのもの。
スペシャリティ化学を中核とし、
地球環境に貢献しながら
持続可能な企業を目指します。

代表取締役社長 泉原 雅人

企業理念/歴史

創業の精神に基づく今日の挑戦、
自己変革の一歩が、
明日を、そして未来を変える

当社は1897年、宇部での石炭採掘を出発点とする歴史の古い企業ですが、今、大きな変革期を迎えています。2022年4月には社名を宇部興産からUBEへ変更し、化学事業持株会社として新たなグループ経営をスタートさせました。

しかし、経営の根底にある理念は変わりません。UBEの企業理念を語る上で欠かせないのは、2つの創業の精神――「共存同栄」「有限の鉱業から無限の工業へ」です。
今の時代に即して言えば、「共存同栄」はすべてのステークホルダー、つまり株主や投資家、顧客、従業員はもとより、取引先、地域社会、さらには地球環境との共生であり、「有限の鉱業から無限の工業へ」は化石資源に大きく依存しない事業構造改革による持続的成長です。これらが私たちのDNAとして受け継がれ、今なお会社の進むべき方向を示しています。

この創業の精神のもと、当社グループは経営理念を「技術の探求と革新の心で、未来につながる価値を創出し、社会の発展に貢献します」と定めました。
創業以来の歴史の中で培ってきたモノづくりの技術を活かし、社会に必要とされている価値を、社会が求める安全で環境負荷の少ない方法で創り出し、常に人々に提供していくことが私たちの使命であり、当社のパーパス(存在意義)です。
また当社が大切にしている4つの価値――「倫理」「安全と安心」「品質」「人」についての取り組み姿勢を経営方針として謳い、これら一連のものをUBEの企業理念体系としています。

では現在、当社が具体的にどのような未来を目指していくのかと言いますと、2022年度からスタートさせた現中期経営計画策定時に「2030年の目指す姿(長期ビジョン)」として、「地球環境と人々の健康、そして豊かな未来社会に貢献するスペシャリティ化学を中核とする企業グループ」を掲げました。
そしてUBEへの社名変更を機に、3つのTから始まるタグライン「Transform Tomorrow Today」を制定し、当社のロゴマークの横に示しました。直訳すれば「今日、明日を変える」。今日のさまざまな挑戦、あるいは自己変革の一歩が、明日を、そして未来を変えます。時代や事業環境に応じて経営体制を変え、常に挑戦してきた当社にとって最適なスローガンといえます。
「Transform Tomorrow Today」を胸に、私たちは今後も自己変革を積極的に進め、社会の変化に立ち向かっていきます。

泉原社長が考える
UBE株式会社とは

変化を恐れず、
変化を楽しめる人財なくして
UBEの変革はない

冒頭で申し上げた通り、当社は歴史の古い会社ですが、さまざまな個性をもつ人財が変化を恐れずにチャレンジし、経営体制や事業構造を変革させてきた結果、現在のUBEがあるわけで、そのような人財の多さがすなわちUBEらしさだと私自身は思っています。
特に今後スペシャリティ化学を中核とする事業構造への変革を目指す中、自らが自発的にキャリアを形成する「情熱・スピード感・変革マインドを持つ挑戦者」が当社には必要です。
組織として、あるいはチームで結果を出すことは重要ですが、過去の当社の事業拡大、成長を振り返れば、非常に強い個性を持つこうした挑戦する人財が、あふれる情熱や変革マインドに駆り立てられて組織を引っ張り、さまざまな困難を乗り越えてきたといえます。長い歴史をひも解けば、「〇〇さんなしにこの事業の今はなかった」というような個人名が必ずと言っていいほど上がってきます。まさに変化を恐れず、むしろ変化を楽しめる人財なくしてUBEの変革の歴史はなかったのです。
採用面でこうした人財を求めるのはもとより、全従業員にも「目指す人財像」として浸透させるべく取り組んでいきます。

個性ある人財を大切にし、育んでいくには、挑戦や前向きな失敗を許容する企業風土が必要です。
当社の社風を短い言葉で表すとすれば、「ざっくばらんにモノが言える」「人に誠実に向き合う」といったところでしょうか。皆が安心して言いたいことが言えるようにし、そして気取らない社風を継続していくために、社内コミュニケーション、風通しの良さを保つよう、社長として最大限の努力をしたいと思っています。
私自身の取り組みとして、各事業所や海外拠点に出向き経営状況を定期的に説明する他、年十数回、現場の各階層と車座でのミーティングを行い、声を直接聞くなどのコミュニケーションを図っています。

今後、スペシャリティ事業に大きくシフトするに当たっては、より一層個性を活かせる、イノベーティブな職場づくりが重要で、その推進のため現在最重要課題と位置付けているのがDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)です。
モノカルチャーの風土ではイノベーションが生まれにくいし、女性社員もその能力を十分発揮し、国籍・経験・価値観などさまざまなバックグラウンドを持つ多様なメンバーがグローバルに活躍できる組織でなければ、変化をいち早く察知して新しい環境に柔軟に対応することができません。DE&Iについては具体的な数値目標を決め、着実に取り組んでいるところです。

今後の展望や取り組み

加速度的な
社会変化にどのように対応するか。
ポイントは
「方向性」と「スピード」

未来は常に見通しがたく、また変化は加速度的に早まっています。これに対応するためのポイントは2つ。「方向性」と「スピード」です。

まず1つ目のポイント。先行き不透明でその進み具合は紆余曲折があるとはいえ、世界が地球環境問題に対応しながら持続可能な社会を目指すという大きな方向性に間違いはありません。この方向性をしっかりと踏まえ、私たちは現在、「スペシャリティ化学の成長」と「地球環境への貢献」を一体の成長戦略として推進しています。

昨今のグローバルなエネルギー事情、地球環境問題への人々の意識の高まりを鑑みれば、エネルギー負荷が高く、コストで勝負する汎用的な化学品に頼っていてもUBEの未来はありません。エネルギー負荷が低く、市況変動に左右されにくい高収益なスペシャリティ化学事業へ移行、集中していき、大きく成長させる。それがすなわち安定的な利益の拡大や収益率の向上とともに自らのGHG排出量の削減にもつながり、また社会全体のカーボンニュートラルの実現にも寄与することになるのです。

スペシャリティ化学には当社独自の超耐熱性樹脂ポリイミドを始め、ガス分離膜、C1ケミカル、高機能コーティング、医薬などの事業があり、これらが成長をけん引するドライバーということになります。
今後のグローバルな事業拡大に向けて大きなトピックと言えるのが、米国ルイジアナ州におけるC1ケミカル(DMC・EMC)プラント建設投資の決定です。DMC・EMCは電気自動車などに使われるリチウムイオン電池の必須原料であり、米国ではすべて輸入(UBE以外では中国メーカーのみ)に頼っているのが現状です。日本のメーカーである当社が出発原料であるDMCを現地で生産することは、米国の経済安全保障にも大きく貢献できると思っていますし、現地のサプライチェーンに加わることは、お客様からも強く求められてきたところでもあります。

なお、カーボンニュートラルについてはすでに現中期経営計画において、2050年にカーボンニュートラルを実現させるため、中間目標として2030年度までに温室効果ガス(GHG)排出量50%削減(対2013年度)を目標として打ち出し、また環境貢献型製品・技術の連結売上高比率60%以上という目標も併せて掲げています。

もう1つ重要なポイントは「スピード」です。
現中期経営計画をスタートさせて以降、特にスペシャリティ化学事業の成長投資における意思決定を速やかに実施してきました。また可能な案件では前倒しの実行を進めるとともに、国内外の投資額も大きく増やしてきました。
さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)をあらゆる分野で進めています。製造、研究開発、営業、サプライチェーン、あるいは経営管理などの一層の効率化、スピードアップにDXは欠かせません。また、DXの効果を発揮しやすくするため、基幹情報システムの更新時期も大幅に前倒ししました。さらにAI(人工知能)やビッグデータの活用によって、業務の高度化、高付加価値化を図っています。
このような取り組みを通じて、スペシャリティ化学事業の成長と地球環境への貢献という基本戦略の実行をスピードアップさせ、時代の激しい動きに迅速に対応していきたいと考えます。

Point

地球環境問題に取り組むことは成長戦略の一環。
サステナブルな社会へ貢献する

地球環境問題への取り組みや対策と言うと、往々にして制約条件や追加コストとしてイメージされ、いわば企業の成長の足かせと考えられがちです。しかし、これを受け身に捉えるのではなく、逆に成長戦略の一環にしようと私たちは考えています。
当社では地球環境問題について次の3つの重点領域に分けて取り組んでいます。

1つ目は「気候変動問題(カーボンニュートラル)」への対応です。
カーボンニュートラルの実現については先ほども述べた通り、2030年度までにGHG排出量50%削減を目指しており、これを着実に進めていく予定です。とはいえGHGの削減は省エネや生産プロセスの改善といった地道な努力だけでは達成できません。当社でGHGの排出量がもっとも多いのはベーシックな化学品の生産によるものであるため、我が国でのアンモニアやナイロン原料などの製造を2030年度までに停止するなど、事業構造そのものを改革することで目標を達成し、環境負荷の少ないスペシャリティ化学事業に移行していく計画です。
なお、当社のGHG排出量削減目標については、科学的根拠に基づきパリ協定が求める水準と整合したものとしてSBT(Science Based Targets)認定を取得しています。

2つ目は「循環型社会(サーキュラーエコノミー)」への貢献です。
サーキュラーエコノミーの実現のため、自社操業で排出されるプラスチックなどの廃棄物の削減を図り、再生材やバイオマスを活用した製品およびリサイクル技術の開発を行っています。
当社では国際認証(ISCC PLUS)を受けた、バイオマスやリサイクル由来の原料を使用した製品を製造・販売しています。また2030年度までにサーキュラーエコノミーの実現に資する製品を含め、環境貢献型製品・技術の売上高比率を60%以上とすることを目標にしています。

そして3つ目が「自然環境の保全・復興(ネイチャーポジティブ)」への貢献です。
私たちの事業活動における自然への依存と影響を把握し、自然環境の保全や復興、生態系サービスの持続可能な利用に貢献すると同時に、各製品における水資源の使用率の削減にも取り組んでいます。また、水を守る森林づくりへの参画なども積極的に行っています。

地球環境問題への対応のほかにも、私たちはサステナブルな企業として、またサステナブルな社会の形成に貢献するため、様々な取り組みを行っています。
その大前提として重点的に取り組んでいるのが「人権の尊重」です。当社は「UBEグループ人権指針」として、個人の尊厳を尊重し、性別、国籍、障がい、年齢、社会的身分などによる差別をしないことなどを定めています。また「国連グローバル・コンパクト(健全なグローバル社会を築くための世界最大のサステナビリティ イニシアチブ)」にも署名し、これが定める4分野(人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、腐敗防止)を基本理念とし、啓発活動を推進しています。

サステナビリティはUBEの経営が目指すものそのものです。先ほどの地球環境問題の3つの領域および人権尊重、さらには安全や品質、コンプライアンス等々、サステナビリティの諸課題に対するUBEグループにふさわしい施策を明確化した上でPDCAを回し、ステークホルダーとのエンゲージメントを通じて着実に戦略・施策を実行していきます。

経営者として
大事にしていること

多様な人財が能力を発揮できる場を提供し、
事業と人財を一緒に育てていく

「経営者として大事にしていることは何ですか?」と聞かれることがあります。私は、現場との対話を含めて様々なコミュニケーションを良好にすること、そして人の率直な意見をよく聞くこと、と答えます。
社長は「ラストマン」。つまり自分の後ろにはもう誰もいないのです。最終判断を下し、そのすべての責任を取るのは自分。だからこそ様々な意見をしっかり聞いた上で最後は自らが腹を据えて意思決定を行う。そこは常に大切にしているところです。

経営者の重要な役割は従業員がやりがいを感じる場、働きがいのある仕事を提供することだと思います。着実に成長している事業、会社としてこれから伸ばそうと注力する事業に携われば人は自ずと前向きになり、仕事にやりがいを感じます。事業が大きくなれば組織に合わせて自分の役割もますます大きくなり、ポジションや待遇も当然それに見合うものになっていくでしょう。事業の成長は会社にとって重要なだけでなく、そこに携わる従業員にとってもいいことなのです。

適切な事業の入れ替えなどにより、成長事業をしっかりと確保し、多様な人財が思う存分能力を発揮できるような場を提供して、事業と人財を一緒に育てていくのが経営者の大きな役割であろうと思います。

ステークホルダーの
皆さまへ

変化を恐れず
次のステージへのステップアップを目指してまいります

当社はまさにトランスフォーメーション(自己変革)の真っただ中にいます。
「適者生存」という言葉がありますが、他者より強い者、賢い者が生き残るのではなく、環境変化に対応できた者だけが生き残ることができます。当社は創業当時から、環境変化を新たな事業拡大のチャンスに変え、さらなる成長を果たしてきました。先人たちが時代の変化を自己変革で繰り返し乗り越えてきたように、そのDNAを受け継いでいる私たちも、変化を恐れず、自己を信じて果敢に挑戦することによって次のステージへステップアップできると確信しています。

長期ビジョン「地球環境と人々の健康、そして豊かな未来社会に貢献するスペシャリティ化学を中核とする企業グループ」を目指し、スペシャリティ事業の拡大と地球環境への貢献を両輪として、サステナブルな成長を推進してまいります。
今後も皆様の温かいご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

代表取締役社長

泉原 雅人