社長メッセージ CEO Message

お客様からのドアノックを"待つ側"から、
自らドアノックを"する側"へ。
2030年までに「UBEの姿を一新する」ことを
コミットします。
代表取締役社長 西田 祐樹
社長就任の決意/新パーパスに込めた想い
「希望ある化学で、難題を打ち破る。」
社員全員が新パーパスを
語れることこそがブランディング
当社は1897年、宇部市での石炭採掘を出発点とし、128年の歴史を数える会社です。2022年4月には社名を宇部興産からUBEへ変更し、化学事業会社として新たなグループ経営をスタート。今後、2030年に向けてスペシャリティ化学の成長を目指していきます。
2025年4月1日、私は当社の第14代社長に就任しました。重責ではありますが、入社以来、一貫して化学事業に従事してきた私にとって、これからスペシャリティ化学企業になろうというタイミングでの引き継ぎに大きなやりがいを感じているところです。
同日、新しいパーパス「希望ある化学で、難題を打ち破る。」も対外発表しました。私自身、新パーパス策定には熱を入れてきただけに、感慨深いものがあります。その言葉に込めた想いを少し紹介させてください。
以前、事業部長時代の私は、「当社はお客様からファーストノック(パートナーとして指名)を受けられる会社になりたい」と思っていました。しかし、あるときドアノックを待っている側ではダメだと気づいたのです。スペシャリティ化学企業であれば、胸を張ってドアノックをする側(パートナーとして名乗り出る)になるべきであり、お客様のみならず、社会の困難や課題に対してもドアノックしていかなければならないと。ドアノックを待つ側からノックをする側へ転換するためにも大きなパーパスが必要だと考えたのが、新パーパス策定のきっかけでした。
しかし、振り返ってみれば、当社は長い歴史のなかで数え切れない難題を打ち破り、成長と革新を続けてきました。それは、2つの創業精神「共存同栄」「有限の鉱業から無限の工業へ」とともに、「不都合な現実の前でも諦めなかった」先達のDNAが脈々と受け継がれてきたからにほかなりません。これらを糧に、「化学の力が全産業の希望となるよう、問題を解決していこう」という意味を込めて、短い言葉に集約しました。
ただし、せっかくのパーパスも策定しただけでは意味がありません。まずは社内に浸透させ、「私はパーパスのこの役割を担っています」と全従業員が自分事として語れてこそ、社会全体から見た当社の姿も変わっていくはずです。これこそが正にブランディングだと私は思っています。
そのため、パーパスを浸透させる変革スローガン「未解決な未来に挑もう。」も、今回あらたにつくりました。このスローガンを名刺や工場のヘルメット、採用活動やエキシビションなどあらゆる目につく場所に掲示し、「私は未解決な未来の〇〇に挑もう。」と自分事に置き換え、一人ひとりが自身のスローガンを持てるよう、着実に意識改革を進めていくつもりです。
スペシャリティ化学企業としての成長
過去に類のない、
大きな設備投資案件を一気に決定
私が目指す目標の一つ目は、2025年度からスタートする中期経営計画に基づき、スペシャリティ化学企業への経営構造転換を強力に進め、実現することです。 その足がかりとして、アンモニアチェーンの国内製造を停止する時期について、計画より2年早め、2027年度末に停止を決定。タイ拠点でも2026年にカプロラクタム(CPL)を停止する意思決定をしました。50年以上にわたって当社を支えてきた大きな事業ですが、GHG(温室効果ガス)の負荷が非常に高かったベーシック化学事業の生産を停止することにより、脱炭素社会に向けて方向転換を行うとともに、ボラティリティの高い汎用製品に頼らない事業転換を押し進めていく考えです。

一方、スペシャリティ化学事業を伸ばすため、まずは今後大きな市場拡大が見込まれるリチウムイオン電池の電解液用途として、米国ルイジアナ州への進出(C1ケミカル製品としてDMC、EMCの製造ライン立ち上げ)を決めました。これまでヨーロッパ、アジアの各拠点で化学事業を行ってきましたが、原料調達がしやすく、人口増加も見込めるアメリカ市場への参入は、長年の夢でした。さらにC1ケミカルチェーンの川下である高機能ウレタン事業について、独ランクセスからM&Aを実施し、インオーガニックな成長も見込んでいます。2つの関連する海外大型投資をほぼ同時期に意思決定できたことに多大な喜びを感じています。
研究開発力の強化、人事制度改革
研究開発力の強化は人的資本への投資であり将来の夢。
個人の成長のためには人事制度も改革すべし

「スペシャリティ化学企業として成長する」という一つ目の目標を達成するには、(他社との差異化を図るための)研究開発投資の強化もやるしかないと思っています。
現在、当社の研究開発費の売上高比率は2~3%程度ですが、それを4%程度まで増やすことによって、将来の夢にかける投資を行っていくつもりです。これが二つ目の目標です。
当然ですが、研究開発費はコストではなく、研究者の成長、すなわち個人の成長を見据えた人的投資です。そのためには、人事制度も改革する必要があります。
私は過去3年間、DX推進室室長として、主に"X(トランスフォーメーション)"を担当してきました。まさに会社を変える(=ビジネストランスフォーメーション、BX)仕組みづくりを推進してきたのです。そのなかに当然、人事領域もあります。従業員一人ひとりが自らの能力を最大限に発揮できる環境を整えるべく、さまざまな業種にわたる『10人財像の定義』も決めました。飛び抜けた人たち、とんがった能力を有する人たちをいかに評価するか。それが企業発展のもっとも重要な要素であるとの考えに基づき、個々のキャリアオーナーシップ・マネジメント構築の実現に向けた包括的な人事制度の充実を含め、DXについては今後も私が陣頭指揮をとってまいります。
環境保護、地域社会への貢献
環境保護や地域社会への貢献活動を積極的に推進
さらに三つ目として、企業の社会的責任を果たすため、環境保護や地域社会への貢献活動を継続していきます。
当社の工場がある宇部をはじめ、堺、千葉、国外ではスペイン、タイにおいて、それぞれの地域に合った貢献活動、環境保護活動を行ってきました。このたび進出するアメリカにおいても、そうした活動が非常に重要になると思っています。
もとより、化学工場の建設は地域住民の賛成なしに進めることはできません。化学工場=危険ではないことをご理解いただくためには説明を尽くし、情報共有することが大切です。また、当社の歴史や既存の拠点における地域貢献活動をご紹介し、安心感を持っていただくことも必要です。その上で、「私たちはアメリカの一市民として事業をやっていきたい」と真摯に訴え、対話を続けていくなかでようやくご納得いただき、議会承認も得て工場建設を着工することができました。
この先も対話を重ね、地域のみなさまに喜んでいただける貢献を積極的に続けていく所存です。

経営者として
大事にしていること
仕事の極意は"スピード"。
相手の期待を上回るスピードで驚きを与える

仕事をする上で、私がずっと心がけてきたのは"業務のスピード"です。
時間をかけて80点のものを出すのであれば、スピーディに合格ライン(60点)のものを仕上げたい。たとえば、お客様に資料やサンプルを提供するのであれば、相手の期待をいい意味で裏切り、お客様を驚かせたいのです。冒頭で申し上げた「ドアノックをする側」とはまさにこれで、驚くほどのスピード感で届いたものは、中身がたとえ60点であっても相手にとっては80点にも見えることがあります。さらに、フィードバック(相手の意向)も早く戻ってくるわけですから、そこから一気に100点まで持っていくことも可能です。
また、自ら限界を決めることは絶対にしたくないと思ってきました。内心無理だと思っても、実際にやってみると、何かしら解決の糸口が見つかる経験をこれまで何度もしてきたからです。お客様の反応から思わぬヒントをいただくこともあり、スピーディな初動に加え、あきらめずにぶつかっていく行動力が徐々に自信につながっていきました。
経営者としては慎重な判断も必要ですが、かと言って、遅い判断でさまざまな意思決定を遅らせることはしたくないと思っています。これが私の信条であり、まずは一歩を踏み出し、動きながら考え変化に対応していくことが、「会社の風土・文化を変える」ことにも通じると考えます。
ステークホルダーの
みなさまへ
DXでUBEグループの
ビジネス変革を推進
社長であっても、私には今後もDX推進室担当という肩書が付いてきます。DXは先述した人事領域だけでなく、会社のすべての領域を網羅するものであり、2022年4月のDX推進室発足以来、「スペシャリティ化学の成長」と「地球環境への貢献」に向けたビジネス変革のために活動範囲を拡大してきた結果、現在10領域で活動を推進するに至っています。
各領域の責任者に役員を配置し、経営視点に基づいた運営を進め、2024年度には15億円/年のDX効果が発現し、2027年には89億円/年、2030年には300億円/年の積み上げ効果を見込みます。
DXによる継続的・持続的なビジネストランスフォーメーションをUBEの企業文化として定着させ、スペシャリティ化学の会社として目指す姿にたどり着くまでやり切ることを、すべてのステークホルダーのみなさまに対しコミットします。

代表取締役社長