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Polyimide NEWS

「第65回電池討論会」にて「高容量Si系負極向け新規ポリイミドバインダの開発」について報告致しました。

2025年1月28日

2024年11月20日(水)~22日(金)に開催されました「第65回電池討論会」にて、現在開発を進めているポリイミドバインダについて報告を致しました。 会期初日の初回の講演でしたが、多数のご臨席を賜りありがとうございました。
講演当日に使用致しました資料を下記に掲載致します。

シリコン系負極バインダへのポリイミドの適用可能性

〇高容量・高入出力化のトレンド
 理論容量の大きなSi系活物質の使いこなしが盛んに検討されている。
 課題:大きな膨張収縮に伴う微粉化・サイクル劣化

〇バインダに必要とされる特徴 バインダに必要とされる特徴

バインダが破断するまでの耐久性指標である「破断エネルギー」が高いことが重要と想定。
破断エネルギー MJ/m3=S-Sカーブの面積

当社製品 UPIA®-AT-1001について

〇UPIA®-AT-1001の特性 UPIA®-AT-1001の特性

物性値 UPIA®-AT-1001
溶媒 NMP
粘度 (Pa・s) 5
保存安定性 室温で安定
固形分濃度 (wt%) 18
イミド化に必要な熱処理温度(℃) 250~350

UPIA®-AT-1001の課題:溶剤の使用・高い熱処理温度

〇UPIA®-AT-1001を用いたポリイミドフィルムの特性

UPIA®-AT-1001を用いたポリイミドフィルムの特性

〇UPIA®-AT-1001を用いたSiO単体電極のサイクル特性

UPIA®-AT-1001を用いたSiO単体電極のサイクル特性

新規水系バインダの開発

〇新規水系バインダのコンセプト
 環境負荷が小さな「水」を溶媒に用い、且つポリマー構造を調整することで低温での熱処理性を向上する。

〇新規水系バインダの特性

新規水系バインダのコンセプト

 水溶性ポリアミック酸溶液

  UPIA®-AT-1001 新規水系バインダ
溶媒 NMP
粘度 (Pa・s) 5 3
保存安定性 室温で安定 室温で比較的安定、
冷蔵で安定
固形分濃度 (wt%) 18 18
イミド化に必要な
熱処理温度(℃)
250~350 150~350

低温熱処理性が改善された新規水系バインダが得られた。

新規バインダの低温キュア性の確認

ガラス転移温度と、熱処理温度別のIRスペクトルの結果から、低温熱処理性が改善したことを確認。

〇新規水系ワニスのポリイミドフィルム製膜条件
 熱処理雰囲気:窒素
 仮乾燥:80 ℃×10 min
 本乾燥:X ℃ × 30 min (x = 120, 150, 200, 250, 350)

〇低温熱処理性の向上確認
 動的粘弾性測定によるガラス転移温度の同定

動的粘弾性測定によるガラス転移温度の同定

 IRスペクトル測定によるイミド化進行度の確認

IRスペクトル測定によるイミド化進行度の確認

新規バインダのイミド化後の機械強度

新規水系バインダは、150℃以上で良好な破断エネルギーを示すことが確認できた。

新規バインダのイミド化後の機械強度

新規バインダを用いたハーフセルの充放電試験

SiO単体電極において、PAANaでは速やかに容量劣化が起こる一方新規水系バインダでは優れたサイクル特性を示した。

〇使用材料

材料名 種別
SiO (約1400mAh/g) 負極活物質
SWCNT 導電助剤
アセチレンブラック 導電助剤
新規水系バインダ or PAANa バインダ

〇ハーフセル評価用電極作製 動的粘弾性測定によるガラス転移温度の同定

〇電極組成

Binder SiO
wt%
Binder
wt%
AB
wt%
SWCNT
wt%
目付
mAh/㎠
新規水系バインダ 78.0 7.0 14.0 1.0 2
PAANa 78.0 7.0 13.8 1.2 2
電極組成

新規開発バインダを用いたSiO電極の連続塗工試作と充放電評価

ロール to ロールでの電極塗工において、カールもなく塗工性良好な電極を得ることが出来た。

〇使用材料

材料名 種別
SiO (約1400mAh/g) 負極活物質
SWCNT 導電助剤
MWCNT 導電助剤
アセチレンブラック 導電助剤
新規水系バインダ バインダ

〇電極組成

SiO
wt%
Binder
wt%
AB
wt%
MWCNT
wt%
SWCNT
wt%
目付
mAh/㎠
78.0 7.0 14.7 0.2 0.1 3.4

〇電極作製(仮乾燥まで)

電極作製(仮乾燥まで)

試作電極を用いた300mAh級の電池評価

ロール to ロール塗工電極を150℃で熱処理。フルセル(ラミネートセル)で優れたレート特性・サイクル特性を確認。

試作電極を用いた300mAh級の電池評価

新規バインダを用いた電池のアプリケーションデモ

電動玩具を用いたロール to ロール電極の性能検証を実施。動作中の電圧・電流値を可視化し新規バインダの利点を見出す。

〇アプリケーション:プラレール®

which is electric train toy

〇使用負極(化成処理を実施し、SOC 100で比較)

Binder SiO
wt%
Graphite
wt%
Binder
wt%
AB
wt%
MWCNT
wt%
SWCNT
wt%
目付
mAh/㎠
厚み 
新規水系バインダ 78.0 - 7.0 14.7 0.2 0.1 3.2 68
PAANa 78.0 - 7.0 14.5 0.4 0.1 3.2 70
SBR
/CMC
- 97.0 3.0 - - - 3.2 180

アプリケーションデモ

新規バインダを用いたSiO電極は電圧変動が小さく安定。
PAANa電極よりも抵抗が低い⇒バインダの影響
黒鉛電極よりも抵抗が低い⇒厚みの影響

左から① 26cm/s ② 26cm/s ③ 25cm/s

Application demonstration using prototype electrodes
Binder Active
Material
走行時
平均
電流
A
最大
電流
A
初期
電圧
V
走行時
平均電圧
V
電圧
振幅
V
新規水系
バインダ
SiO 0.171 0.226 8.05 7.91 0.06
PAANa SiO 0.188 0.239 7.73 7.33 0.33
SBR
/CMC
黒鉛 0.177 0.227 7.90 7.69 0.13