ポリイミドNEWS Polyimide NEWS
学会発表:「第66回電池討論会」にて『高容量Si系負極向け新規水溶性ポリイミドバインダの開発』について報告しました。
2025年11月18日(火)~20日(木)に開催されました「第66回電池討論会」にて、現在開発を進めているポリイミドバインダについて報告を致しました。
会期最終日の講演でしたが、多数のご臨席とご質問を賜りありがとうございました。
講演当日に使用致しました資料を下記に掲載致します。
ポリイミドについて
ポリイミドの合成反応

ポリイミドの特徴
・スーパーエンジニアリングプラスチックの中でも最上位に位置し、優れた強度/耐熱特性/絶縁性を有する。
シリコン系負極バインダへのポリイミドの適用可能性
高容量・高入出力化のトレンド
理論容量の大きなSi系活物質の使いこなしが盛んに検討されている。
課題:大きな膨張収縮に伴う微粉化・サイクル劣化
バインダに必要とされる特徴

バインダが破断するまでの耐久性指標である「破断エネルギー」が高いことが重要と想定。
破断エネルギー MJ/m³=S-Sカーブの面積
昨年度学会発表の成果概要
水系バインダのコンセプト
環境負荷が小さな「水」を溶媒に用い、且つポリマー構造を調整することで低温での熱処理性を向上する。
水溶性ポリアミック酸溶液外観
水系バインダの特性
| UPIA®-AT-1001 | 水系バインダ(昨年度報告) | |
|---|---|---|
| 溶媒 | NMP | 水 |
| 粘度 (Pa・s) | 5 | 3 |
| 保存安定性 | 室温で安定 | 室温で比較的安定、冷蔵で安定 |
| 固形分濃度 (wt%) | 18 | 18 |
| イミド化に必要な熱処理温度(℃) | 250~350 | 150~350 |

課題
●150℃未満の、さらに低い温度での熱処理が求められる。
(既存水系PIバインダでは、150℃未満の熱処理では実力を発揮できない)
●初期充放電効率が低い。
↓
更なる低温熱処理性改善と不可逆容量低減の検討を実施。
新規水系バインダの開発
新規水系バインダのコンセプト

ワニス物性概要
| UPIA®-AT-1001 | 既存水系PIバインダ(昨年度報告) | 新規水系PIバインダ | |
|---|---|---|---|
| 溶媒 | NMP | 水 | 水 |
| 粘度 (Pa・s) | 5 | 3 | 3~6 |
| 保存安定性 | 室温で安定 | 室温で比較的安定、冷蔵で安定 | 室温で比較的安定、冷蔵で安定 |
| 固形分濃度 (wt%) | 18 | 18 | 21 |
| イミド化に必要な熱処理温度(℃) | 250~350 | 150~350 | 120~350 |
| バインダ自体が持つリチウムとの反応指数*(参考値) | 1 | 0.64 | 0.45 |
*UPIA®-AT-1001を1として相対値を記載
新規バインダの低温キュア性の確認
・ガラス転移温度と、熱処理温度別のIRスペクトルの結果から、低温熱処理性がさらに改善したことを確認。
ポリイミドフィルム製膜条件
熱処理雰囲気:窒素
最高熱処理温度:120, 130, 150, 400℃
スピンコートの様子
新規水系PIワニスの低温熱処理性の向上確認

新規バインダのイミド化後の機械強度
・新規水系PIバインダは、120℃以上で良好な破断エネルギーを示すことが確認できた。

新規バインダを用いたハーフセルの充放電試験
・スクリーニング評価用の電極組成と電極作成スキームにて評価用電極を作製。良好な電極を作製できた。
使用材料
| 材料名 | 種別 |
|---|---|
| SiC(約1800mAh/g) | 負極活物質 |
| SWCNT | 導電助剤 |
| アセチレンブラック | 導電助剤 |
| 水系バインダ | バインダ |
電極組成
| Binder | SiC wt% | Binder wt% | AB wt% | SWCNT wt% | 目付 mAh / cm² |
|---|---|---|---|---|---|
| 新規水系バインダ | 80 | 10 | 9.8 | 0.2 | 3 |
電極作成

新規バインダを用いたハーフセルの充放電試験
・昨年度報告PIバインダに比較して、130℃でのサイクル保持率が向上。
・初期クーロン効率は1%程度向上。バインダのLiトラップ量を低減することができた。
電極組成
| SiC wt% | Binder wt% | AB wt% | SWCNT wt% | 目付 mAh/cm² | 厚み μm | 多孔度 % |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 80 | 10 | 9.8 | 0.2 | 3 | 35 | 40 |
電池特性
| サンプル | 初期クーロン効率(~1V %) | 初期クーロン効率(~2V %) | 50cyc保持率(%, 2nd基準) |
|---|---|---|---|
| 新規水系PIバインダ 130℃ |
85.3 | 90.3 | 85.1 |
| 既存水系PIバインダ 130℃ |
84.2 | 89.6 | 78.2 |
| 既存水系PIバインダ 150℃ |
84.5 | 89.6 | 85.1 |
| PAANa | 91.3 | 93.4 | 59.5 |
初期クーロン効率の改善度合いは、バインダの反応性指数をベースとして計算した値と近しいことも確認。

最適電極設計における充放電評価
新規水系バインダを用いてフルセル(コインセル)を作成して充放電試験を実施。
優れたサイクル特性を示すことが確認できた。
負極組成
| SiC wt% | Binder wt% | AB wt% | SWCNT wt% | 目付 mAh/cm² | 厚み μm | 多孔度 % |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 80 | 12.9 | 6.5 | 0.6 | 3.3〜3.4 | 35 | 40 |
充放電条件
正極:NCM811 (SUS箔に塗工)
正極目付:3.0mAh/cm2
正極厚み:約80μm
多孔度:40%
電解液:1M LiPF6 EC:DEC(1:1vol%)+1wt% VC
セパレータ:ガラスフィルター
1サイクル目:2V-4.2V、0.05CC充放電
2,3サイクル目:2V-4.2V、0.1CでCCCV充電、0.1CC放電
4~:2.7~4V、0.2CでCCCV充電、0.2CC放電

新規水系バインダの特性まとめ
- 溶媒に水を用い、分子構造を調整することで120℃での熱処理が可能となった。また120℃熱処理においても、優れた破断エネルギーを示した。
- Liとの反応性も抑制され、初期クーロン効率が約1%向上した。
- SiCを用いた電極でも120~130℃熱処理において良好なサイクル特性を得ることが出来た。(PAANaでは速やかに劣化)