環境 3. 自然環境の保全・復興(ネイチャーポジティブ)への貢献

戦略

事業活動における自然への依存と影響を把握し、リスクと機会を特定したうえで、自然環境の保全と復興や、生態系サービスの持続可能な利用に貢献していきます。また、ネイチャーポジティブの実現に役立つ製品、技術、サービスを提供します。

目標・計画

  • 水資源:各拠点の水状況(コンテクスト)や水需給シナリオに基づく水ストレス動向を分析します。水ストレス上昇が予想される拠点では、水利用戦略の策定やKPIの監視を通して、取水量の削減や水リサイクル率向上を実現させます。
  • 自社操業における大気汚染、水質汚濁、土壌汚染などの環境負荷:汚染物質排出量をモニタリング・削減し、環境事故ゼロを実現します。
  • エンゲージメント:サプライチェーン(環境負荷把握)、社員(教育)、顧客(環境貢献型製品・技術の提供)、投資家(情報提供、意見交換)、地域(環境改善活動)などに働きかけます。自然環境への悪影響(トレードオフ)を検証し、負の影響の最小化を図ります。

意義

人間の生活を支えている多くの製品・サービス、エネルギーは、自然の恵みによってもたらされています。自然環境を守り、劣化した自然を復興させ、生態系サービスを保全することは、生活環境や暮らしを守ることにつながります。自然環境の保全や復興は気象災害軽減に加えて文化、伝統、景観や食文化の保護にもつながります。

取り組み

自然環境(生物多様性)保全・水資源の保全への対応のため、各事業所のリスク分析を実施しています。

  • UBEグループの、「自然環境の保全・復興(ネイチャーポジティブ )への貢献」に関する基本的考え方や活動状況をまとめた資料

2023年度の取り組み

水資源の重要性についての認識

自然に依存する水は化学工業において熱媒体(冷却、蒸気)、溶剤、洗浄など多種多様な用途に使用されており、UBEグループにとって水資源は重要です。

WRI Aqueduct(世界資源研究所が提供する世界の水リスクを評価するツール)などの情報を基に、主要事業拠点における水リスクの状況を把握・分類し、各拠点での事業が高リスクと判断される水源に過度に依存していないことを確認しました。

また、タイおよびスペインの拠点においては、2030年以降に水ストレスが上昇する可能性に備えるため、生産量当たりの水使用量の削減率や水リサイクル率の目標を設定し、各種対応を進めています。

水リスク評価結果

WRI Aqueduct等の情報に、現地拠点が得た情報を加味して主要事業拠点の水リスクを以下のとおり、5段階に分類しました。

高リスクの淡水源からの取水はありませんでした。

リスクレベル 総取水に占める比率 事業所 主なリスク原因
高い 0% 該当なし
高い〜中程度 0% 該当なし
中程度 3% タイ主要事業所ほか 水需給ひっ迫度、干ばつ
低い〜中程度 1% スペイン主要事業所 洪水
96% 日本主要事業所
低い 3% 該当なし

なお、タイとスペインの主要事業所では、2030年以降、水ストレスが上昇する傾向にあることから、以下のようなKPIを設定し対応を進めています。

事業所 KPI
タイ主要事業所 生産量当たりの水使用量の削減率(2021年度比) 2024年度 5%削減 2023年度実績 44.5%増加
水リサイクル率 2024年度 26% 2023年度実績 27.7%
スペイン主要事業所 生産量当たりの水使用量の削減率(2022年度比) 2030年度 10%削減 2023年度実績 4.0%削減
水リサイクル率 2030年度 10% 2023年度実績 0%

UBEグループのWASHに関する取り組み

SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」に関連し、WASH(Water Access, Sanitary and Hygiene)対策を進めています。WASHとは、地球上のすべての人々が安全な飲み水、手洗い用の水、衛生設備(トイレ)にアクセスできることを意味しています。

UBEグループでは、まず自社拠点でのWASH環境を整備し、社員の健康かつ健全な労働環境の確立を目標として設定し各事業所が対応を進めています。

  • WASH目標(安全な飲み水、手洗い用の水、衛生設備(トイレ)へのアクセス)の設定(全事業所)
  • 事務所手洗い場の蛇口にセンサーを設置するなどの節水対策実施(堺工場)
  • 上水設備の更新、排水管理の徹底(UBEマシナリーグループ)
  • ミネラルウォーターサーバーの常設(本社)

UBEグループはSDGsの目標6に含まれる8つのターゲットのうち、No.6.3※1や、No.6.4※2などの目標に貢献できるポジションにあることから、法令順守、目標設定により、対応を進めています。

  • ※1No.6.3: 2030年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物質や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での世界的規模での大幅な増加により、水質を改善する。
  • ※2No.6.4: 2030年までに、全セクターにおいて水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。

生物多様性保全上重要な地域との近接性の確認

IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool)や主要事業拠点の情報を基に、各拠点の自然保護地域や生物多様性の保全上重要な地域との近接性を確認し、影響を与える可能性とその程度を継続的に確認しています。

  • ラムサール条約対象地への隣接はありません。
  • 宇部地区が接する海水面は、IUCN(国際自然保護連合)の保護地域管理カテゴリー(IUCN management category)のうち、管理カテゴリーⅥに該当します。
  • 宇部地区が接する海水域は、国の規制から漁業権設定を受けています。
  • 宇部藤曲地区が隣接する厚東川河口域は、KBA(生物多様性の保全の鍵となる重要な地域、周防灘、厚東側河口域)となっており、環境省が認定する全国の生物多様性の観点から重要性の高い湿地500カ所の一つとなっています(No.400 厚東川・有帆川・厚狭川河口(塩性湿地,河川,干潟,汽水域))。また、環境省は、厚東川河口干潟を、“生物多様性の観点から重要度の高い海域”(No.15805)としています。なお、当社からこれらの水域への汚染物質の直接排出はありません。

2023年度のその他の取り組み

海洋プラスチックごみ問題

  • 近隣企業と合同で清掃を実施(堺工場)
  • ペットボトルキャップの水平リサイクル処理検討(UBEマシナリーグループ)
  • 修養団宇部市連合会主催 年末街頭清掃への参加(宇部ケミカル工場)
  • 廃棄物保管場所などのパトロール(3カ月に1回)(宇部ケミカル工場)
  • プラスチックリサイクル推進(宇部ケミカル工場)

生物多様性保全

  • 共生の森 森づくり活動への参加(堺工場)
  • 工場内環境セミナーの実施(堺工場)
  • 美祢農林水産事務所主催「水を守る森林づくり」体験活動への参加(宇部ケミカル工場)
  • アルゼンチンアリ(特定外来生物)の駆除(行政報告)。事業所外への拡散防止対応(駆除)を実施(宇部ケミカル工場)
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第16回水を守る森林づくり体験活動

社内炭素価格(インターナルカーボンプライシング)について

当社は、設備投資におけるCO2価値の評価指針として、社内炭素価格を設定しています。

目的 1. CO2対策の重要性の意識付け
2. 省エネ・燃料転換などCO₂削減投資の促進
開始時期 2010年4月1日~
対象温室効果ガス エネルギー起源CO2
記載する項目 CO2増減量、CO2を加味した場合の経済性指標
(CO2増減量が1,000t-CO2/年以上のもの)
対象となる資料・文章 1. 設備計画の経営会議審議用説明書
2. 稟議書(執行時)
CO2価値 15,000円/t-CO2(2024年度)
但し、規制動向等により大幅に変更が生じた場合は、都度通知。価格を変更する