環境 ネイチャーポジティブ(自然環境の保全・復興)への貢献

指針・基本的な考え方

UBEグループネイチャーポジティブに関する基本指針

UBEグループは、カーボンニュートラル(気候変動問題)への対応、サーキュラーエコノミー(循環型社会)およびネイチャーポジティブ(自然環境の保全・復興)への貢献に注力し、地球環境問題の解決に貢献します。

ネイチャーポジティブとは自然の本質的な性質である生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることを意味します。UBEグループの企業活動は、自然に影響を与える可能性があり、自社製造やバリューチェーンでの自然への影響を抑え、また、劣化した自然を復興する必要があります。

UBEグループは、事業活動における自然への依存と影響を把握し、リスクと機会を特定したうえで、自然環境の保全と復興や、生態系サービスの持続可能な利用に貢献していきます。

スコープ

UBEグループ(UBE株式会社および連結子会社)を対象とします。適用範囲は全てのバリューチェーンとします。

ゴール

ネイチャーポジティブの実現への貢献

コミットメント

  • 自社操業で発生する汚染物質(大気汚染、水質汚濁、土壌汚染等)排出量の継続的なモニタリングと排出量の抑制に努めます。
  • 主要事業拠点の水リスクの状況を把握・分類し、事業にとって重要な水資源の保全・有効活用に努めます。
  • サプライチェーン全体の環境負荷を低減するため、ステークホルダーへのエンゲージメントを実施します。
  • カーボンニュートラル及びサーキュラーエコノミーの実現のためのコミットメントを達成します。
  • 原料調達量上位50%以上に該当するサプライヤーとのエンゲージメントを継続し、さらに充実させます。

責任部署・見直し

サステナビリティ推進部が統括管理を行います。

本指針は、少なくとも1年以内に1回の定期見直しを実施します。期中に見直しが必要な場合は、地球環境問題対策委員会で審議し、承認を得ます。

  • UBEグループの、「自然環境の保全・復興(ネイチャーポジティブ )への貢献」に関する基本的考え方や活動状況をまとめた資料

目標と実績

指標 スコープ
(範囲)
実績 目標
2024年度 2030年度
化学物質の排出量削減
20種類の重点化学物質の排出量削減率(2010年度比)
国内グループ 38% 70%
廃棄物の排出量削減
産業廃棄物外部埋立処分量削減率(2000年度比)
国内グループ 92% 95%

ネイチャーポジティブの実現に向け、TNFD提言に基づく情報開示への対応を進めています。

取り組み

化学物質の排出抑制

  • PRTR法対象物質排出量
    PRTR法対象物質排出量
  • VOC排出量
    産業廃棄物の外部埋立処分量
  • 集計範囲:UBEの国内工場・研究所および生産工場を有する主要な国内連結子会社。
  • この集計範囲は、国内主要連結子会社の70%をカバーしています。
  • 2024年度分は集計中です。

20種類の重点化学物質の排出量

2030年度目標:70%削減(2010年度比)

UBEグループでは、PRTR法※1対象物質や揮発性有機化合物(VOC)※2などの中から、排出量の多い20種類の重点化学物質※3を全社の重点物質とし、排出抑制を進めています。2024年度は、20化学物質の排出総量を38%削減しました。引き続き、化学物質の排出抑制を進めていきます。

  • ※1PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法:事業所から排出・移動した化学物質の量などを把握し、行政に届け出することを義務づけた法律。届け出された情報は環境省のウェブサイトに公開される。情報の公開を通して、自主的な化学物質の管理の改善を促進することを目的として制定された。
  • ※2VOC(Volatile Organic Compounds):揮発性を有し、大気中で気体となる有機化合物の総称。浮遊粒子状物質および光化学オキシダントの生成原因となる。
  • ※320種類の重点化学物質:PRTR法対象物質やVOCなどの中から、排出量の多い20種類の化学物質を全社の重点物質として選定。選定した20化学物質は、メチルアルコール、ブチルアルコール、トルエン、イプシロン-カプロラクタム、スチレン、アンモニア、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、しゅう酸、酢酸ビニル、キシレン、n-ヘキサン、エチルベンゼン、クロロメタン、ベンゼン、フタル酸ジメチル、N、N-ジメチルアセトアミド、ほう酸化合物、フェノール、ふっ化水素およびその水溶性塩。

フロン排出抑制法への対応

地球温暖化やオゾン層破壊を防止するため、フロン冷媒(CFC、HCFC、HFC)の漏えい抑制を目的としたフロン排出抑制法が2015年4月に施行されました。フロン冷凍機や空調機器の点検などの法規制を遵守し、さらにフロン類の回収・充填方法の改善や機器運転中の管理強化でフロン漏洩の防止を図っています。

また、プロセスで使用しているフロン冷凍機について、低GWP(Global Warming Potential)のHFCもしくはノンフロンを冷媒に使用する機器への更新を計画的に進めています。

PCB(ポリ塩化ビフェニール)廃棄物の処理

PCB使用安定器など使用中機器の掘り起こし調査を徹底し、改正PCB特別措置法で定められた期限までにPCB廃棄物の処分が完了するよう回収を進めています。また、保管・処理にあたっても法規制を遵守し、中間貯蔵・環境安全事業株式会社や無害化処理認定業者を活用して計画的に処理を進めています。

PCB含有機器の保管台数(2024年4月現在 UBE)
(単位:台)
使用 保管 合計
高濃度PCB 0 0 0
低濃度PCB 23 26 49

UBEは、2021年度に高濃度PCB廃棄物の処分を完了しています。低濃度PCB廃棄物につきましても、改正PCB特別措置法が定めた期限までに、全数の処分が完了するよう、計画的に回収・処分を進めています。

産業廃棄物の削減

  • 産業廃棄物のリサイクル量
    産業廃棄物のリサイクル量
  • 産業廃棄物の外部埋立処分量
    産業廃棄物の外部埋立処分量
  • 集計範囲:UBEの国内工場・研究所および生産工場を有する主要な国内連結子会社。
  • この集計範囲は、国内主要連結子会社の70%をカバーしています。

産業廃棄物外部埋立処分量

2030年度目標:95%削減(2000年度比)

UBEグループでは、循環型社会の形成に向けた取り組みとして、産業廃棄物の発生抑制や再資源化を推進しています。2024年度は2000年度比で92%削減しました。引き続き、産業廃棄物の削減に向けた取り組みを推進していきます。

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示

UBEグループは、生物多様性及び自然環境の重要性を認識し、事業活動における自然への依存と影響を把握し、地球環境問題の解決に貢献する企業経営を行います。その実現に向けた取り組みの推進や体制整備にあたって、TNFDの提供するフレームワークを活用し、自社の取り組みや分析結果の整理を進めています。

2024年度は、TNFDより提供される分析アプローチ手法「LEAP」に基づき、UBEグループ(連結)の国内全工場拠点を対象として、自然との依存・影響関係を調査・評価しました。

各工場拠点の依存・影響評価

外部ツール「ENCORE」を用いて依存・影響状況を評価しました。その結果、UBEグループの主要な事業活動は、水資源と関わりが深いこと、また化学物質の排出による環境影響が、「注視すべき重要な関係性」であると示されました。

要注意地域の調査

外部ツール「Global Forest Watch」、「IBAT」、「Aqueduct」、「GLOBIO Model」などを用いて、TNFDの定義する要注意地域と工場拠点との接点を調査しました。この結果、山口県と福岡県の沿岸に所在する拠点は、生物多様性の観点で注視するべき拠点であることが判明しました。

自然関連リスクと機会の特定と評価

外部ツールの評価結果に、実際の依存影響関連指標の定量的な評価結果を踏まえ、TNFD risk and opportunity registersやセクター別ガイダンス、WWF のRisk Filter Suiteを用い、リスクと機会の洗い出しと重要性評価を行いました。

シナリオ分析

TNFDのガイダンスに従い、「ネイチャーポジティブ実現に向けて市場の理解がスムーズに進む場合」と、「操業地域周辺における想定以上の自然劣化により急激な規制が施される場合」の2つのシナリオを想定しました。

マトリクスマッピング(重要性評価)

自然関連リスクと機会の評価は、「重要度」「発生頻度(可能性)」の2軸でその優先度を判断しました。「重要度」については、主に拠点別活動(取水・排水量、有害物質排出量など)、要注意地域との接点の有無、Risk Filter Suiteにおけるオペレーションリスク評価指数の大きさなどを総合的に判断しています。「発生頻度(可能性)」については、シナリオ分析を踏まえ定性的に評価しています。

この2軸評価のいずれにおいても重要性が高い拠点を、優先的に取り組みが必要な重要優先地域として4ヶ所選定しました。

マトリックスマッピング(重要性評価)
マトリクスマッピング

重要優先地域と重要課題

LEAPアプローチやマトリックスマッピングによる分析・考察の結果を踏まえた重要優先地域の事業活動、重要課題及び対応の方向性を表にまとめました。

重要優先地域 関連する拠点 主な事業活動 重要課題 対応の方向性
山口県
宇部市
周防灘沿岸
UBE株式会社
宇部ケミカル工場 東西地区
宇部ケミカル工場 藤曲地区
機能品(化学製品)製造
  • 周辺流域の水質汚濁
  • 有害化学物質の流域排出
  • 災害レジリエンスの向上
  • 環境関連法令規制強化
  • 地域レピュテーションリスク
  • 有害物質排出状況のモニタリングとメンテナンスの徹底及び開示
  • BCP対策及び、災害被災を念頭とした有害物質管理の徹底
  • 周辺地域の自治体や環境保護コミュニティとのコミュニケーション及び連携
福岡県
吉富町
豊前海沿岸
UBE株式会社
吉富工場
医薬品製造
  • 周辺流域の水質汚濁
  • 有害化学物質の流域排出
  • 災害レジリエンスの向上
  • 環境関連法令規制強化
  • 地域レピュテーションリスク
  • 有害物質排出状況のモニタリングとメンテナンスの徹底及び開示
  • BCP対策及び、災害被災を念頭とした有害物質管理の徹底
  • 周辺地域の自治体や環境保護コミュニティとのコミュニケーション及び連携
千葉県
市原市
UBEエラストマー株式会社
千葉工場
樹脂及び合成ゴム素材製造
  • 周辺流域の水質汚濁
  • 有害化学物質の流域排出
  • 災害レジリエンスの向上
  • プラスチック使用及び廃棄処理
  • 環境関連法令規制強化
  • 有害物質排出状況のモニタリングとメンテナンスの徹底及び開示
  • BCP対策及び、災害被災を念頭とした有害物質管理の徹底
  • バリューチェーンの関連各国及び自治体における法令規制の施行及び検討状況の把握と対応
大阪府
堺市
UBE株式会社
堺工場
  • 有害化学物質の流域排出
  • 災害レジリエンスの向上
  • プラスチック使用及び廃棄処理
  • 環境関連法令規制強化
  • BCP対策及び、災害被災を念頭とした有害物質管理の徹底
  • バリューチェーンの関連各国及び自治体における法令規制の施行及び検討状況の把握と対応

今後の取り組み

2024年度は、LEAPアプローチにより重要な優先地域と課題を特定しました。今後はデータ収集並びにKPI及びターゲットの策定を進め、TNFDに基づく情報開示を推進します。また海外拠点の扱いやバリューチェーン上流への展開等にも、順次取り組んでいきます。

水資源の保全

自然に依存する水は化学工業において熱媒体(冷却、蒸気)、溶剤、洗浄など多種多様な用途に使用されており、UBEグループにとって水資源は重要です。

WRI Aqueduct(世界資源研究所が提供する世界の水リスクを評価するツール)などの情報を基に、主要事業拠点における水リスクの状況を把握・分類し、各拠点での事業が高リスクと判断される水源に過度に依存していないことを確認しました。

また、タイおよびスペインの拠点においては、2030年以降に水ストレスが上昇する可能性に備えるため、生産量当たりの水使用量の削減率や水リサイクル率の目標を設定し、各種対応を進めています。

水リスク評価結果

WRI Aqueduct等の情報に、現地拠点が得た情報を加味して主要事業拠点の水リスクを以下のとおり、5段階に分類しました。

高リスクの淡水源からの取水はありませんでした。

リスクレベル 総取水に占める比率 事業所 主なリスク原因
高い 0% 該当なし
高い〜中程度 0% 該当なし
中程度 3% タイ主要事業所ほか 水需給ひっ迫度、干ばつ
低い〜中程度 1% スペイン主要事業所 洪水
96% 日本主要事業所
低い 3% 該当なし

なお、タイとスペインの主要事業所では、2030年以降、水ストレスが上昇する傾向にあることから、以下のようなKPIを設定し対応を進めています。

事業所 KPI
タイ主要事業所 生産量当たりの水使用量の削減率(2021年度比) 2024年度 5%削減 2024年度実績 11%増加
水リサイクル率 2024年度 26% 2024年度実績 35.1%
スペイン主要事業所 生産量当たりの水使用量の削減率(2022年度比) 2030年度 10%削減 2024年度実績 16.5%削減
水リサイクル率 2030年度 10% 2024年度実績 0%

UBEグループのWASHに関する取り組み

SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」に関連し、WASH(Water Access, Sanitary and Hygiene)対策を進めています。WASHとは、地球上のすべての人々が安全な飲み水、手洗い用の水、衛生設備(トイレ)にアクセスできることを意味しています。

UBEグループでは、まず自社拠点でのWASH環境を整備し、社員の健康かつ健全な労働環境の確立を目標として設定し各事業所が対応を進めています。

  • WASH目標(安全な飲み水、手洗い用の水、衛生設備(トイレ)へのアクセス)の設定(全事業所)
  • 事務所手洗い場の蛇口にセンサーを設置するなどの節水対策実施(堺工場)
  • 上水設備の更新、排水管理の徹底(UBEマシナリーグループ)
  • ミネラルウォーターサーバーの常設(本社)

UBEグループはSDGsの目標6に含まれる8つのターゲットのうち、No.6.3※1や、No.6.4※2などの目標に貢献できるポジションにあることから、法令順守、目標設定により、対応を進めています。

  • ※1No.6.3: 2030年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物質や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での世界的規模での大幅な増加により、水質を改善する。
  • ※2No.6.4: 2030年までに、全セクターにおいて水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。

生物多様性保全

IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool)や主要事業拠点の情報を基に、各拠点の自然保護地域や生物多様性の保全上重要な地域との近接性を確認し、影響を与える可能性とその程度を継続的に確認しています。

  • ラムサール条約対象地への隣接はありません。
  • 宇部地区が接する海水面は、IUCN(国際自然保護連合)の保護地域管理カテゴリー(IUCN management category)のうち、管理カテゴリーⅥに該当します。
  • 宇部地区が接する海水域は、国の規制から漁業権設定を受けています。
  • 宇部藤曲地区が隣接する厚東川河口域は、KBA(生物多様性の保全の鍵となる重要な地域、周防灘、厚東側河口域)となっており、環境省が認定する全国の生物多様性の観点から重要性の高い湿地500カ所の一つとなっています(No.400 厚東川・有帆川・厚狭川河口(塩性湿地,河川,干潟,汽水域))。また、環境省は、厚東川河口干潟を、“生物多様性の観点から重要度の高い海域”(No.15805)としています。なお、当社からこれらの水域への汚染物質の直接排出はありません。

森づくり活動

  • 共生の森 森づくり活動への参加(堺工場)
  • 工場内環境セミナーの実施(堺工場)
  • 美祢農林水産事務所主催「水を守る森林づくり」体験活動への参加(宇部ケミカル工場)
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第17回水を守る森林づくり体験活動

特定外来生物対応

  • アルゼンチンアリ(特定外来生物)の駆除や行政報告、事業所外への拡散防止対応を実施(宇部ケミカル工場)

海洋プラスチックごみ問題

  • 近隣企業と合同で清掃を実施(堺工場)
  • ペットボトルキャップの水平リサイクル処理検討(UBEマシナリーグループ)
  • 修養団宇部市連合会主催 年末街頭清掃への参加(宇部ケミカル工場)
  • 廃棄物保管場所などのパトロール(3カ月に1回)(宇部ケミカル工場)
  • プラスチックリサイクル推進(宇部ケミカル工場)