環境 カーボンニュートラル(気候変動問題)への対応

指針・基本的な考え方

UBEグループカーボンニュートラルに関する基本指針

UBEグループは、カーボンニュートラル(気候変動問題)への対応、サーキュラーエコノミー(循環型社会)およびネイチャーポジティブ(自然環境の保全・復興)への貢献に注力し、地球環境問題の解決に貢献します。

人間活動による大気中のGHGの増加は、地球温暖化を引き起こし、気候に大きな変動を与えています。この気候変動は、自然環境の急激な変化や生態系サービスの劣化にも繋がりかねません。気候の急激な変化は、我々の生活や事業活動に対して極めて深刻な影響を与える可能性があります。

UBEグループは、カーボンニュートラルに積極的に対応し、社会的責任、使命を果たします。

スコープ

UBEグループ(UBE株式会社および連結子会社)を対象とします。適用範囲は全てのバリューチェーンとします。

ゴール

2050年度Scope 1,2のカーボンニュートラル実現

バリューチェーン全体(含むScope 3)のカーボンニュートラルの推進

コミットメント

  • バリューチェーン全体のカーボンニュートラルの実現に貢献するため、Scope1,2のGHG排出量を削減し、並行してScope3のGHG排出量削減を推進します。
  • 2030年度のGHG削減目標の確実な実行と、2035年度GHG排出量削減目標達成に向けた対策の立案を行います。
  • 2027年度までに、2050年度カーボンニュートラル実現のロードマップを策定し、開示します。
  • 2050年度カーボンニュートラルに向けた中間目標
    • 2030年度 GHG排出量 2013年度比50%削減【Scope1,2】
    • 2030年度 環境貢献型製品・技術の売上高比率60%以上

責任部署・見直し

サステナビリティ推進部が統括管理を行います。

本指針は、少なくとも1年以内に1回の定期見直しを実施します。期中に見直しが必要な場合は、地球環境問題対策委員会で審議し、承認を得ます。

目標と実績

指標 スコープ
(範囲)
実績 目標(2013年度比)
2024年度 2030年度 2035年度 2050年度
GHG排出量削減率【Scope1,2】 UBEグループ 32% 50% 70% カーボンニュートラル
環境貢献型製品・技術の売上高比率 UBEグループ 45% 60%以上

SBT※1認定

2023年11月、UBEグループのサプライチェーン全体での2030年度GHG排出量削減目標について、認定機関であるSBTイニシアチブ※2(以下「SBTi」)より、その基準および推奨事項への適合認定を受けました。特にUBEグループのScope1&2のGHG排出量削減目標は、地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える取り組みに整合することが確認されました。

目標の概要

企業のGHG排出削減に関する目標は、SBTiの定量的、定性的基準および目標検証プロトコルに従って評価され、すべての適用要件に適合するものが認定されます。今回、認定を受けた2件の概要は以下のとおりです。

基準年 目標年 UBEグループ数量目標値 SBTi目標値(下限)
Scope1,2※3 2021年 2030年 45% 42%
Scope3※3 2021年 2030年 25% 25%

Scope3の削減対象範囲は、「購入した製品・サービス」、「販売した製品の廃棄」」および「投資(持分法適用会社等のScope1 & 2 GHG排出量の出資比率分)」です。

  • ※1SBT(Science-Based Targets):パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定するGHG排出量削減目標
  • ※2SBTイニシアチブ(Science-Based Targets Initiative):2030年までの排出量半減および2050年までのネットゼロ排出量の達成に向けた企業の取り組みを加速させることを目標にする、最新の気候科学に基づいた野心的な排出量削減目標の設定を企業に促す国際的な団体
  • ※3Scope1:事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
    Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
    Scope3:事業者自らによる排出を除いた、事業者のバリューチェーンの上流から下流に至るすべての関連する排出

取り組み

温室効果ガス削減に向けた取り組み

  • UBEグループ GHG排出量削減目標の達成状況
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    • UBE三菱セメントグループに移管されたセメント関連事業は除いています。
  • 事業別GHG排出量 2024年度実績
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カーボンニュートラルに向けたロードマップ

GHG排出削減目標

生産活動における徹底した省エネ推進・プロセス改善に継続的に取り組むとともに、再生可能エネルギーの利用の最大化や化石資源利用の最小化等を推進します。さらに、2050年のカーボンニュートラル達成には、革新的な技術開発が不可欠であることから、中長期的な視野で、他社との協業を含めた原料の非化石化やCO2利活用技術の研究開発・実用化にも取り組みます。

カーボンニュートラルに向けたロードマップ
カーボンニュートラルに向けたロードマップ
  • トップランナー制度:省エネ法に基づき、エネルギー消費効率が最も優れた性能を示す機器・設備類をトップランナーとして指定する制度。

環境貢献型製品・技術

環境貢献型製品・技術の開発を推進し、より多くのお客様に提供することで、UBEグループおよび社会全体のカーボンニュートラルへの貢献を目指します。

環境貢献型製品・技術 連結売上高比推移
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  • UBE三菱セメントグループに移管されたセメント関連事業は除いています。
環境貢献型製品・技術 連結売上高比60%以上にするためのタイムライン
環境貢献型製品・技術 連結売上高比60%以上にするためのタイムライン

UBEグループでは、ISO14001:2015改訂版を基にガイドラインを策定し、環境貢献型製品・技術を定義しています。

<関連情報>

UBEグループの環境貢献型製品・技術と環境製品ブランド「U-BE-INFINITY®」を紹介します。

事業構造改革

スペシャリティ事業へのシフトは、GHG排出量削減とともに、市況に大きく左右されない事業構造への転換につながります。UBEグループは、スペシャリティ事業を中心とする、収益性に優れ、かつ環境負荷の低い事業構造を目指します。

収益性が低下し、将来にわたって業績の回復が見込みがたいアンモニア、カプロラクタム、ナイロンポリマーは日本、タイ拠点で撤退・縮小することを決定しました。日本のカプロラクタム(残存主要期系)、ナイロンポリマーは2027年3月に、アンモニアは2028年3月に生産を停止します。また、タイ拠点では、2027年3月までにカプロラクタムの生産を停止し、ナイロンポリマーは生産を縮小します。特にアンモニア、カプロラクタムは生産工程でGHGを多く排出するため、これらの事業構造改革を実行することで、2030年度のGHG排出量50%削減目標は2028年度に達成できる見込みです。

2024年度の取り組み

GXリーグ/GX-ETSへの参画

UBEは、2023年4月にGXリーグおよびGX-ETS(Emission Trading Scheme)に参画し、同9月に2023~2025年度の3年間および2030年度のGHG排出量削減目標を提出しました。

GXリーグとは、経済産業省のGX基本構想に基づき設立された、GXを推進しカーボンニュートラルへの移行を牽引する枠組みです。また、GX-ETSはGXリーグにおける排出量取引制度であり、第1フェーズ(2023~2025年度)は自主的な取引市場として運営された後、2026年度から実際の制度が開始されることになりました。UBEグループは、GX-ETSの活動を通じて情報の開示およびGHG排出量の削減に努めます。

  • GX(グリーントランスフォーメーション):化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用するための変革やその実現に向けた活動 

製品別GHG排出量データ算出のシステム化

UBEは、(株)NTTデータと共同で製品別のGHG排出量を算定するシステムを構築し、2023年1月よりシステムで算出したサプライチェーン上流側を含むデータをお客様へ提供しています。UBEが提供するGHG排出量データによって、お客様におけるサプライチェーンおよびバリューチェーン全体でのGHG排出量把握が容易になり、より効率的なGHG削減対策に貢献します。

なお、現在は宇部ケミカル工場、堺工場、UBEエラストマー千葉工場のUBEグループ製品を対象にシステムを運用しています。

一次サプライヤーとのエンゲージメント

UBEは2023年5月に、主要原材料における主な一次サプライヤー各社とのエンゲージメントの第一歩として、地球環境問題への取り組みに関するアンケート調査を実施しました。その結果、一次サプライヤー各社の取り組みの実態を把握するとともに今後の課題を抽出し、2024年度はこれをもとに重要な一次サプライヤーに対して個別ヒアリングを行いました。UBEは、今後もこの活動を通じて一次サプライヤーの協力を得つつ、サプライチェーン全体の地球環境問題への貢献に努めていきます。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示

2017年に金融安定理事会(FSB)により設置され、最終報告書(TCFD提言)を公表。2023年10月に解散し、国際財務報告基準(IFRS)が継承。

1. ガバナンス体制

UBEグループでは、地球環境問題に関する課題を把握し、対策を講じる地球環境問題対策委員会を設置しています。社長が議長を務める経営会議(サステナビリティ委員会)は、地球環境問題対策委員会から報告を受けるとともに活動計画や重要課題を審議し、統括・指示を行い、継続的に対策の進捗状況を確認しています。また、重要事項については取締役会に定期的に報告され、取締役会が適切に監督しています。

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2. 戦略

気候変動対応による低炭素・脱炭素社会への移行を前提に、2030年以降の考えられる姿(シナリオ)を複数検討しそれぞれのシナリオに沿ってUBEグループのリスクおよび機会(チャンス)を分析し、必要とされる戦略を策定しています。

移行シナリオとして2℃シナリオと4℃シナリオの2つ、および物理シナリオを検討・作成し、それぞれのシナリオにおけるUBEグループのリスクおよび機会を分析しています。その結果、それぞれのシナリオにおいて、顕在化が想定されるリスクによる影響は免れられないものの、同時に顕在化が想定される機会を取り込むことによって、持続的な企業価値の向上が可能であることを確認しました。

なお、これらのシナリオ分析は2019年に実施したものであるため、今後は1.5℃シナリオに基づく見直しを検討していきます。

  • 2℃シナリオ:WEO※1のSDS※2、NPS※3、ETP※4のRTS※5、2DS※6をベースとし、他のリソースも活用して自社シナリオを補強し、検討を行いました。リスク分析では、カーボンプライシングのシナリオ、石炭価格シナリオおよび代替燃料シナリオ等を検討し、2025年、2040年データから2030年の予測と自家発電の対応シナリオの作成を行いました。機会分析として、電動車や代替燃料へのサポート強化によるそれらの普及率や再生可能エネルギーの増加の予測を行いました。また、プラスチックのリサイクル拡大を支援する政策シナリオや産業界へのCCUS※7導入を支援する政策シナリオによるリスクと機会を分析し、UBE製品の需要や今後の研究 開発案件のシナリオの想定を行いました。それらに加え、2100年までに世界の平均気温の上昇を2℃に抑える可能性が少なくとも50%以上を示すエネルギーシステムの道筋とCO2排出経路を参照し、分析を実施しました。
  • 4℃シナリオ:WEO、NPSおよび日本のNDC※8やIEA ※9の石炭価格シナリオを基に検討しました。
  • 物理シナリオ:IPCC AR5※10におけるRCP8.5シナリオ※11に基づき長期的な視点での気温上昇に伴う、海面上昇・極端な降水・壊滅的な台風等の発生頻 度の上昇等からUBEのインフラ設備や社員への影響を想定し、その影響度を検討しました。また工場が立地している地域のハザードマップ等を顧慮し地域の特性を加味しました

シナリオ分析の検討ステップ

  • 各事業がどのようになるか、自家発電の操業予測を含めてシナリオごとに検討
  • 各シナリオの検討結果をもとにUBEグループとしての将来を分析
  • 2050年を見据えた、2030年におけるレジリエンス強靭化を有する長期戦略を策定

上記のシナリオ分析の結果、2030年近傍の財務への影響の大きいものを以下のとおり整理しています。

シナリオ検討結果

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  • ※1WEO: 世界エネルギー展望(World Energy Outlook)
  • ※2SDS: 持続可能な開発シナリオ(Sustainable Development Scenario)
  • ※3NPS: 新政策シナリオ(New Policies Scenario)
  • ※4ETP: エネルギー技術展望(Energy Technology Perspectives)
  • ※5RTS: 参照シナリオ(Reference Technology Scenario)
  • ※62DS: 2℃シナリオ(2℃ Scenario)
  • ※7CCUS: 二酸化炭素の回収・有効活用・貯留(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)
  • ※8NDC: 国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution)
  • ※9IEA: 国際エネルギー機関(International Energy Agency)
  • ※10IPCC AR5: 気候変動に関する政府間パネル第5次評価報告書(Intergovernmental Panel on Climate Change Fifth Assessment Report)
  • ※11RCP8.5シナリオ: 代表濃度経路シナリオ(Representative Concentration Pathways 8.5 Scenario)。他にRCP2.6、RCP4.5、RCP6.0シナリオがあり、数値が大 きいほどGHG排出量が多い。

3. リスク管理

UBEグループでは、気候変動対応を、リスク情報の一元管理や対策の実施状況などのモニタリングで活用しているリスク管理システムに登録し、管理しています。リスク管理システムに登録されたリスクは、それぞれの影響度に応じて経営リスク、重要リスク、ミドルリスク、マイナーリスクに分類され、経営リスクと重要(重大)リスクは、経営会議で審議された後、具体的な戦略・施策へ反映されます。

気候変動対応は、地球環境問題として経営会議(サステナビリティ委員会)で審議され具体的な戦略・施策へ反映されるとともに、取締役会に定期的に報告され、取締役会が適切に監督しています。それらの過程で、UBEグループ全体の気候変動に関するリスクとして識別・特定され、サステナビリティ推進部担当役員を委員長とした全社的横断組織の地球環境問題対策委員会にて、対策および取り組み方針などが立案・実施されます。

4. 指標及び目標

UBEグループは、地球環境問題への取り組みに関する2030年度の目標を下記のとおり定めています。

温室効果ガス(GHG)排出量 2013年度比 50%削減
環境貢献型製品・技術の連結売上高比率 60%以上
  • 集計範囲: 連結対象会社の主要事業所等のScope1 & 2

UBEグループは、日本、タイ拠点におけるアンモニア、カプロラクタム、ナイロンポリマーの生産を撤退・縮小することを決定しました。この事業構造改革によって、2030年度のGHG排出量50%削減目標は2028年度に達成できる見込みです。それにより、財務上のリスクの最小化が可能であると考えています。

社内炭素価格(インターナルカーボンプライシング)

当社は、設備投資におけるCO2価値の評価指針として、社内炭素価格を設定しています。

目的 1. CO2対策の重要性の意識付け
2. 省エネ・燃料転換などCO2削減投資の促進
開始時期 2010年4月1日~
対象温室効果ガス エネルギー起源CO2
記載する項目 CO2増減量、CO2を加味した場合の経済性指標
(CO2増減量が1,000t-CO2/年以上のもの)
対象となる資料・文章 1. 設備計画の経営会議審議用説明書
2. 稟議書(執行時)
CO2価値 10,000円/t-CO2(2025年度)
但し、規制動向等により大幅に変更が生じた場合は、都度通知。価格を変更する